壊されるおうちで展示会

古いおうちが取り壊されることになり、私と仲間たちは、古いおうちへの恩返しとして・スクラップアンドビルドという営みへ疑問を投じる行為として「おうちさよなら会」を行いました。
居間に南向きの庭から差し込む、葉を透過した緑のゆらぐ光がとてもきれいなことをよく覚えています。背を記録した柱の傷や、修理の跡は、おうちが大切にされてきたことを物語っていました。古いおうちの痕跡にはなまるをあげるように、部屋に作品を添え、部屋を作品にしました。作品はお客さんとの話のたねとなり、おうちは昔のような賑わいを最期にもう一度取り戻しました。
普段気に留めないかもしれませんが、皆さんのおうちには面白い痕跡がたくさんあります。それは家ががんばって建ってきたしるしです。
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プロジェクト名:おうちさよなら会
実施場所:東京都大田区
開催期間:2016.12.29~30
製作メンバー:青山実樹、飯島知代、池田梨乃、内田麻衣、占部将吾、大石隆誠、
大木麻衣子、岡田愛美、小幡友樹、杉山由香、田坂創一、田村聖輝、中山和典、
直塚敬司、二瓶哲也、林咲良、星野善晴、松本洋輔、矢島俊紀、山本生馬
▲「脱皮するイマ」
空間の皮膚を一枚はがしてみる。
自由になった皮膚は、光を浴び、風に揺られ、痕跡に据わる。
さよならをしに訪れた人と一緒に、かつての居間の賑わいを取り戻し、最期の今を迎える。
「△△△」
このテーブルは不思議な継手でできています。
分裂したり合体したりして、小さなテーブルになったり大きなテーブルになったりします。
その場の空気に合わせて会を設えます。
▲「KAMON」
壁面に刻まれた紋様と重複するイメージ。それは、これから体験する空間に編み込まれた、
時間と空間を跳躍する様々な紋の体験へのアプローチである。
想像力の世界のあてどない旅へと私たちを誘う、
渦紋であり、家紋であり、華紋であり、家門なのである。
▲「裸の王様」
裸の王様は実際には存在しない服を着ている。彼にしか見えないものがあったのではないだろうか。
この部屋の大きな額縁には、数十年の歳月と、数十人の人出をかけて制作された、
唯一無二の大作が飾られている。
▲「おうちの最期に花が咲く」
本日はおうちさよなら会に足を運んでいただき、ありがとうございます。
私たちから皆様に一つお願いがあります。
今日まで50年間頑張ってきたおうちに、花マルのプレゼントをしてほしいのです。
皆様の一言とともに、花マルを描いて、庭の木に飾ってください。
会が終わるころには、木が花マルでいっぱいになりますように。
▲「時間差の影」
薄暗さのなかで人は今まで見えなかったものを無限に想像することができるだろう。
この部屋では過去から現在まで生きてきた家の分身と現在を生きる
自分の分身が重なり合い一つの場所ができる。
▲「図形庵」
とある住人は湯船につかったり、熱いシャワーを浴びることなくこのおうちと別れた。
冷たいシャワーだけしか使わない入浴は、行水に近く、この場所が少し神聖な場所に感じられた。
〇△□の図形には禅的な解釈がある。風呂場に潜在する図形を強調し顕在化させ、庵のような空気を纏わせた。
▲「家の足跡」
家が建っていた50年間の家族構成の変化を足跡で表現した。
▲会場風景